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『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』を読みつつ

今読んでいるこの本に、私の心に触れる言葉がありました。



(知らない人のために少し説明:『数学ガール』は数学小説のシリーズです。数学小説というジャンルがあること自体が驚きですが、そのシリーズ3冊目です。このシリーズは数学好きの人のために書かれたもので、数学好きの男子高校生を主人公にし、ラブコメ・青春小説風味に仕立てております。)

『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』を買った後しばらく放置して、今少し読んでいます。その言葉があったのはまだ前半の極限を扱うあたりです。この本の本題(そしてわが愛すべき、今では旬を過ぎた数学基礎論)にはいるのはまだまだ先ですが。ここで、数学談義をしている主人公たちに、ピアノ愛好会の友人が割り込んできます。
「(前略)ときどき、《音楽がわからない》という人がいるうまく言葉にできひんことをすべて《わからない》で片付ける人やな。音楽を、そのまま味わおうとしぃひん。言葉にできなくてもいいんや。言葉にならんから、音にしてるんやから。言葉にしたがる人は、音を聞いてへん。言葉を探してばかりで、演奏者が生み出した、かんじんの音を聞いてへん。音が響く時間を、音が広がる空間を味わってへん。言葉探すな、耳すませ!…ということや」
あぁ、音楽に限らず、美術にもいますねぇ。そういうことを言う人が。なるほど芸術家と批評家の間だけの狭い世界で通じる美術もありますが、線の面白さ、構成のバランス、形の持つ勢いや広がりを感じればいいものを、と思う時もあります。
この台詞の後「音楽を聴くのに音を聞かないのは、数学をするのに数式を読まないようなもの」(英語の構文150に出てきそうだな)という話を経て「数学は数学の言葉(=数式)で。自然言語に引きずられていちゃだめ」と数学談義が続きます。記号論理学の元プロパーとしては、数学言語の意義をこんなに芸術的に説いてくれてうれしい限りです。

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数学ガール/ゲーデルの不完全性定理

結城 浩 / ソフトバンククリエイティブ


by myano11 | 2009-12-13 02:34 | 読書

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